8・32のサスペンションはフェイズ2になってから、「 オート・アジャスティング・サスペンション (AAS)」と呼ばれる走行条件で自動的に減衰力を可変してくれる凝った仕組みの電子制御のサスペンションが標準装備されました。
これは今の国産車の一部にも採用されている「 減衰力電子制御サスペンション 」とほぼ同じです。
いわゆる「 可変ダンパー 」となるのですが、8・32の場合、何がどうなってどのように制御されてるのでしょうか?
そして・ ・ ・ 壊れやすいのではないでしょうか?(笑)
イタリア人と電子制御ってなんとも不安な組み合わせです。
当時のカタログには「 最先端のテクノロジー 」と書いてあるのですが・ ・ ・かえって不安になりますよね。(笑)
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AUTOモード時はグリーン |
SPORTモード時はレッド |
SPORTモードへは手動によるボタン切り換え方式です、その上にある黒い小窓は異常のあった時に赤く点滅する警告灯です。
●オート・アジャスティング・サスペンション
・ AUTOスイッチ
オート・アジャスティング・サスペンソンがオート・モードになってるときは、車速や運転のしかたによって、自動的に”ソフト”または”ハード”になります。
・ SPORTスイッチ
スポーツ・モードになっているときは、車速にかかわらず、よりハードな乗り心地になります。
(オートザム刊 8・32オーナーズマニュアル P36より)
これだけでは何がなんだかわかりませんが、とある方より貴重な解説図を入手したのでここに公開いたします。
ちなみに原本をそのまま公開するのはマズイと思いましたので、このページの図はすべて筆者が作画しております。
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構造図を見ると、いわゆる「ツインチューブ式ショックアブソーバー」の改良形のようです。
ツインチューブ式の外筒の部分にサブのオイル室と電磁弁を設けてあり、この弁の開閉により「 ハード 」と「 ソフト 」を使い分けているようです。
「ソフト」の時は電磁弁が開放されてツインチューブ式のダンパーとなり、「ハード」の時は電磁弁が閉鎖されていわばモノチューブ式のようなダンパーとなるものと推測されます。
この電磁弁の開閉は車体右リアにあるコントロールユニット(マニエティ・マレッリ社製)により制御されてます。
このコントロールユニットには、スピードセンサー、スピードメーター、G(垂直振動)センサー、ステアリング角度・回転速度センサー、ブレーキセンサーなどの各検知部からの車体状態の情報が入力され、状況に応じてサスペンションのモードを決定します。
余談ですが、国産の減衰力電子制御装備車のGセンサーは車体前後に1個ずつあるのが常識ですが、8・32のGセンサーはリア側にひとつしかありません。
ま、当時の「最先端のハイテク」ってこんなもんかもしれません、しかもイタリアだし。(笑)
次にAUTOモードでの減衰力の切り換えは、そのほとんどは走行速度で決定されてしまうことが分かりました。運転状況に応じて切り換えているのは 50〜180 km/h までの速度帯のようです。
● AUTOの場合
・ 0 〜 5 km/h : ハード
・ 5 〜 50 km/h : >ソフト
・ 50 〜 180 km/h : 基本的にはソフトで、状況に応じて切り換える
・ 180 km/h以上 : ハード
ではその切り換えゾーンはどのように制御されているのでしょうか?
調べると切り換えの制御は「 基本となる走行スピード 」の制御に、4つのセンサーからの情報が加わってコントロールされています。
この4つのセンサーによる切り換えのマル秘な情報を一気に放出いたします。
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加速(垂直振動)センサー |
・ 加速(垂直振動)センサーによる制御
路面の荒れなどでボディピッチングが大きくなると、加速(垂直振動)センサーが感知します。
図を見ると60km/hで走行してた場合は「 揺れ 」が0.16Gを越えるとハードに切り換わるようです。
以降、走行速度と共に切り換えゾーンは2段階に下降し、100km/h以上になると0.08Gの揺れでハードに切り換わるようです。
でも、0.16Gや0.08Gってどれくらいなんでしょ?(笑)
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ステアリング切り角度センサー |
・ ステアリング切り角度センサーによる制御
ステアリングを切る角度で減衰力を切り換えます。
50〜70km/hの走行では切り角度が55°以上になるとハードに切り換わります。
90km/h以上では25°、140km/h以上ではMAXの20°でハードになります。
走行速度が上昇するにつれ、切り換え値は角度に対し鋭敏になって切り換えています。
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ステアリング回転速度センサー |
・ ステアリング回転速度センサーによる制御
速度とステアリングの回転速度に応じて、減衰力をソフトやハードに切り換えます。
走行速度が100km/hの時は180°/秒の速さでステアリングを操作するとハードに切り換えるみたいです。
まあ、たとえサスが可変してくれても、急ハンドルはつつしんだ方が賢明でしょうね。(笑)
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ブレーキ回路圧センサー |
・ ブレーキ内圧センサーによる制御
これだけは走行速度に左右されない制御になります。
どんな走行速度(50以上の切り換えゾーン内)で走行してようとも、ブレーキの回路内圧が10barを越えるとハードに切り換わるようです。
しかしこれまた・ ・ ・10barってのにピンときませんね。
次にこのAASには自己診断機能があり、異常時にはセレクトSW上のワーニングランプが赤く点灯します。
また故障した場合にはランプの点灯とともに、電磁弁への信号が遮断されてしまうそうです。
つまり故障するとハードモードに固定されてしまうってことになります。
AASが機能してるかどうかの確認は、セレクタを切り換えて30〜40km/hで段差を越えてみるのが一番わかりやすいと思います。
この速度帯なら「 AUTOならソフト 」であり、「SPORTならハード」です。
この方法でもハードがかなり堅くてゴツゴツとした乗り心地になるのが体感できます。
鈍感な筆者でもわかりましたから。(笑)
もとよりショックアブソーバーは消耗品ですのでだんだんと性能劣化が進行し、いつかはヌケてしまいます。
その場合交換となるわけですが、このAASダンパーはいったいいくらするのでしょうか?
調べてみると予想より遥かに高い1セット60万円でした。(当時です、現在はたぶん入手不可能でしょう)
結局純正はあきらめて他メーカーのショックアブソーバーに交換されるオーナーの方が圧倒的に多いようです。
ま、そりゃそうでしょ。
聞くところによるとザックスやモンロー、アラゴスタのショックに換装するオーナーが多いようです。
中には強化スプリングと組み合わせてローダウンした8・32オーナーも数名いらっしゃいます。
早いもので8・32も生産を終了してから10年が経過しています、このオリジナルAASのままで走ってる個体って何台あるのでしょうか?
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