テーマ8・32は夏に弱い、夏は乗れない、夏は必ずオーバーヒートする、などと評されることが多々ありますが、本当のところはどうなんでしょうか?
8・32で迎えた初めての夏に、これを検証してみました。 。
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なぜ8.32は夏に弱い? |
もとより日本の高温多湿な風土気候や、劣悪な交通事情などの問題もありますが、そもそもフェラーリエンジンの発熱量が大きいことがあげられます。
それに加えエンジンを無理やり載せたことにも問題があり、かなりスペース的な制約を受けていて、冷却系のレイアウトがかなり苦しくなっています。
またこの狭さは当然放熱面でもマイナスとなり、発生する熱の逃げ場がほとんどありません。
あたりまえですがクルマの水温はエンジンで発生する熱量と、ラジエターなどから放熱される熱量のバランスで決定されます。
どうやら 「 大きな発熱量 」 「 逃げない熱 」 「 不充分な冷却系 」あたりがオーバーヒートになりやすく、夏に弱いキーワードのようです。
高温多湿・日本での対応策 |
熱問題はかねてからの懸案事項だったのか、90年からのオートザム販売時より、電動ファンが従来のイタリア本国仕様のものからより大型なファンへと変更されました。
ちなみにこれは 単に 「 対策ファン 」 なんて呼ばれてます。
実際に見てみれば一発でわかるのですが、羽の形状が異なっています。
従来の本国ファンは比較的細目の黄色い8枚羽根でしたが、オートザムの対策ファンは乳白色の大きな4枚羽根になってます。
どうやらこれは国産車用ファンの流用らしいのですが、冷却効果を高めるシュラウド(風洞)が専用設計でないためか、エアコンやオイルのホースに干渉しています。
筆者もこれでオイルホース切りましたが・・・。( 前項参照 )
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白い4枚羽根は 「 対策ファン 」 |
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テーマクラブにはご自身で本国仕様電動ファンからザム対策ファンに換装されたツワモノがおりますが、対策ファン( ちなみに日本デンソー製 )のお値段は純正のそれより安く、4万弱で手に入ったそうです。
取付けには穴が違う、ステーを加工する必要がある、やっぱりホースにあたってしまう、などの苦労があったようですが、半日かけてご自分で取り付けたそうです。
効果のほどは劇的!とはいかないものの、かなり冷却能はよくなったそうです、あまりの風量の多さにおもわず感動し、しばしの間見入ってたそうです。(笑)
値段も手ごろで効果もあるので、非装着車のオーナーにこの方法はおススメですが、今となってはもう入手することは不可能かもしれません。
( 対策ファンのパーツ番号 : ZY37−15025 )
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‐ 1998年 初夏 ‐ |
筆者の8・32は通常85〜90度の水温で安定してます。
どんなに回転をあげて走っても、どんな渋滞に捲き込まれてもあまり上昇せずにこの範囲内で安定しています。
こんなよい子が気温の上昇やエアコンの作動で一気に大暴れしだします、6月中旬の暑い日に早くも水温110度 → エアコンオフの初体験をさせてもらいました。
噂には聞いていましたが上昇するスピードの速いこと速いこと、針の変化が目視できるぐらいです、のほほーんとしてたらあっという間にレッドゾーン手前でした。
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通常走行中の水温 |
みるみるうちに |
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ちなみに水温計は110度以上がレッドゾーンになってます。
水温120度でもなんとか大丈夫だと聞いたことがありますが、メーターの針がレッドゾーンにあるのは精神衛生上あまりよろしくないので、一応110度でくいとめるように努力するように決めました。
水温に注意しながら走ってみると、どうやら夏の水温平均値は95〜100度ぐらいのようです。
レッドゾーンまであと10度しか余裕がありませんねぇ・・・ 夏本番は大丈夫でしょうか?
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検証 その1 |
何事も状況がわからないと対策や結果を導けないので、水温の上昇がどのくらいのものなのか様子観察してみました。
大前提として8・32の水温計やら外気温計やらの表示値が本当にあってるかどうかという問題もありますが、まあ、それはそれです。 (笑)
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状態
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外 気 温
(℃) |
水 温
(℃) |
油 温
(℃) |
エアコン
( 設定18℃ 風量2 ) |
夏季以外の通常走行 | 20〜24 | 85〜90 | 80〜90 | なし |
通常走行 | 37 | 93 | 100 | あり |
2分の停車 (信号待ち想定) | 37 | 97 | 103 | あり |
5分の停車 (少渋滞想定) | 37 | 103 | 105 | あり |
10分の停車 (渋滞想定) | 8分50秒で 水温110度 油温112度 達成! | あり |
20分の停車 (大渋滞想定) | 測定する勇気なし |
高速走行 | 37 | 80〜85 | 80〜85 | あり |
※外気温は装備されている外気温計の値です。(1998/7/28 測定)
予想以上に10分ともちませんでした、さすがです。(苦笑)
なお、110度を記録後にすみやかにエアコンを切ると、4分後に107度まで下降しました。
また、エアコンの風量は1〜3とありますが、一番使用頻度の高い2をチョイスしました。
風量を1にすればもちろんマージンが広がると思います。
次になるべくエンジン回転数を上げないように意識的に走ってみることにしました。一応の目安を2500rpmをMAXとし、30分ぐらいさっきと同じ道を走ってみました。
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状 態 |
外 気 温
(℃) |
水 温
(℃) |
油 温
(℃) |
エアコン
( 設定18℃ 風量2 ) |
通常走行 | 38 | 93 | 100 | あり |
2分の停車 (信号待ち想定) | 38 | 95 | 100 | あり |
5分の停車 (少渋滞想定) | 38 | 95 | 100 | あり |
10分の停車 (渋滞想定) | 38 | 96 | 100 | あり |
20分の停車 (大渋滞想定) | 38 | 104 | 100 | あり |
結果、予想以上に水温の上昇を遅延させることができました、20分の停車でも楽々こなしてくれます。
先ほどの結果とこんなに差があるとは驚きです。
考察するに2回目の走行実験は、3つのキーワードのうちの「 エンジンの発熱量 」を抑えるようにした方法です。
もちろん「 逃げない熱 」にも関与してますが、「 不充分な冷却系 」はあまり関係ありません。
たったこれだけの努力でこの結果を得られるのです、この作戦は結構使えそうな雰囲気です。
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8・32の夏 姑息的対策案 |
あたりまえながら 「 夏は乗らない 」 方法が一番の有効技ですが、筆者家唯一のファミリーカーなのでそんなワケにはいきません、灼熱の夏でも毎日乗りたおします。
さっそく筆者ながらの(お金をかけない)対策案を考え、試しに実行してみました。
案1 : 健康的対策法 ( 暑さ我慢 )
感覚的にエアコンさえかけなければ水温はあまり上昇しません、ならばエアコンを我慢すればいいだけのこと。
思い起こせばビートルなんかはエアコンなんてついて無かったし、エアコンの無い部屋で一人暮らしもしていた。
そもそも夏は暑くてあたりまえ、健康にもよさそうだしやっぱり自然のままが一番でしょう。
一番手っ取り早く、お金もかからないシンプルな名作戦です。
結果 : ダメでした。(笑)
歳をとったのと現在の交通事情は容赦ないです、とてもじゃありませんが我慢できません。
クルマは平気でも筆者がオーバーヒートしてしまいます、やっぱりエアコンは必要だと痛感しました。
案2 : 泳ぎ続けるマグロ作戦 ( とにかくラジエターに風をあてる)
これまた感覚的ですがエアコンをかけてても、走行さえしてればそれほど水温は上昇しません。
ならば常に走るようにすればいいと考え、実行してみました。
混雑している時間帯を避けて走るようにする、渋滞にハマった場合は回避して空いている道を走る、混雑している最短距離よりは空いている遠回りを優先させる、などが作戦内容です。
結果 : わりと好調ですが、必ずしも目的地の方向に向かって走れるとは限りません。(笑)
「オレ、なんでこんな逆方向に走ってんだろ?」と目的地からどんどん遠ざかるケースが多々ありました、なんとなく本末転倒。(笑)
当然ながら走れなくなる突発的な渋滞や、高速道などの迂回路が無い渋滞、そして目的地になかなか着けなくなる可能性があるので、これらにこの作戦はあまり有効ではありません。
それにひたすらガソリンを消費する不経済な作戦でもあるので、あまり現実的ではないようです.。(あたりまえですが)
案3 : ミリ単位のアクセルワーク作戦 ( 低回転走行 )
検証結果で実証された作戦です。
8・32は低速でも充分なトルクがあるので、たとえMAX3000rpmでの走行でも交通の流れにのることができます。
アクセルを踏めないもどかしさはありますが、結果が大変効果的だったことを考えるとかなり有用そうです。
現在のところ、我慢と努力さえすれば何の対策もせずに上記案の合わせ技だけでなんとか夏は越せそうな気がします。
しかしながらやはり現実的でない部分が多く感じます。特にエアコンをオフするなどの大技は、とは本人ならまだしも同乗する家族が絶対納得してくれません、容赦無い罵詈雑言の抗議が予想されます。
クルマの買い替えさえも強いられてしまう可能性もあるので、やはり何らかの熱対策を施すことにしました。
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-後編へつづきます- |
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